ウィタ・セクスアリス

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菊丸英二は、ご機嫌だった。
予備校の自習室で、赤本の過去問を解いていたが、はかどってしかたがない。


恋人はカワイイし。
空は青いし。
メシはうまい。



昨日、俺の部屋に大石が来たから、先手必勝と思って、言った。
「俺、やっぱ無理。」

そしたら、何のことって不思議な顔をするから、困った。


「…だから、あれだよ。先週さ、お前がしよーって言ってた…。」
「ああ…。いいよ。英二がいやなら。」


顔色ひとつ変えずに答えたから、逆に戸惑ってしまった。

「…いいのか?」
「いいさ。嫌々したって気持ち良くないだろ?」


そーゆーもんなのかな。
何せ、未知の世界だ。
言われてみればそんな気もする。



何となく、次の言葉が出て来なくなってしまった。
彼も黙っている。

うちの裏にある小学校の、チャイムが鳴っている。
沈黙がいたたまれない。


今日、するのかな、しないのかな。
離れには祖母がいるが、一人部屋になった時に鍵をつけたこともあり、最近は、気にしないで事に及んでいる。

この話、今するんじゃなかったかも…。
そう思いながら、アイスティーの入ったグラスをストローで掻き回した。
溶けた氷が音を立てる。


考えてみれば、俺ばっかり、気持ちいい思いをしてるんだ。
大石が気持ちいいのは一瞬で。

あれ、だって、俺を気持ち良くしたいから、なんだよな。
何だか、急に、申し訳なく思えてきた。



「大石、パンツ脱げ。」
彼は、ぽかんとして俺を見ていた。

「早く。口でするから。脱いで。」
「え…。」

顔が耳まで真っ赤になった。


かわいー。
なんだ、まだ、かわいいところもあるじゃない。

ジーンズのボタンに手をかけて。
外してよ、と目で訴えた。

顔を真っ赤にしたまま、俺の言いなりに、膝までジーンズを下ろして。
おずおずと、俺を見た。


「パンツも。」
「英二…どうしたんだよ。急に…。」
「お前を気持ち良くしたいの。それだけ。」

彼を椅子に座らせると、俺はその前にひざまずいた。
彼の膝を開かせて、顔を割って入れた。


舌を這わせて、ゆっくり…、なんて思っていたのに、目の前にしたら、いきなりくわえ込んでしまった。
だって愛おしいんだもん。

心の高ぶりのままに攻め立てたら、彼はたちまち俺の口の中で、堅く、大きくなっていった。
俺は苦しくなって、口から外して。
愛おしさを込めて、指で優しく撫であげた。
彼の顔を見上げて、感じるところを探しながら。


「英二…。」
えっ、もう?
いくらなんでも、早過ぎじゃない?

シチュエーションに感じちゃってるのかな。
こういう、ムードもへったくれもないのが、お好みだったとは。
発見だ。

すかさず、彼をくわえ直して、くちびるに力を入れて扱いた。
口の中に広がる彼の味。
後味の悪さに、思わず、顔を歪めた。


指で口の周りを拭って、聞いた。
「ね?きもち、よかった?」

「英二、飲んだのか?」
今度は、顔、青くなってる。
かわいいなぁ。

自分だって、時々、俺の、飲んでるじゃない。
「いーの。飲みたかったの!」


指で拭ったそれを舐め取りながら、彼を見上げた。
しようよ、って目で告げた。
しかたないなって顔で、彼は少し笑った。


俺は膝で立って、彼の首に腕を回した。
いたずら心を抑えきれずに、甘えた声でねだった。
「…ね、……はやく…。」



申し訳ないから、という、純粋な動機だったはずが。
結果的に、誘惑したことになってしまった。

だって、彼があんまりかわいいものだから。
彼の困った顔、戸惑う顔、大好き。
優等生の彼の、そんな顔、見ることってあまりなかったから。

それから、情事のときの顔。
俺以外、だれも見ることがない顔。
ほかのだれにも見せたくない顔。

それが見たいから…。



その後は、されるままになってあげた。
彼は、いつも以上に、情熱的だった。

彼に火を点けるのは、すごく楽しい。
優等生のおーいし君が案外エッチで、俺に夢中になってるって事実が、楽しくてしかたない。

でも、あんまりいたずらが過ぎると、怖いことになりそうだから。
しばらくは、おとなしくしてよう。


今度は、どうやって、仕掛けようかな…。

…勉強中も、食事中も、所かまわず、口許がゆるんでしまう、英二だった。


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