ウィタ・セクスアリス

BACK | NEXT | LIST


大石秀一郎は浮かれていた。
恋人とは順調。
模試の結果も上々。
心なしか、肌もツヤツヤだった。


去年の冬のはじめに、キスを覚えた。

英二のくちびるは、俺のよりずっとずっと、やわらかくて。
やり方もわからず、ただ吸いついていたら、腫れちゃうよ、と嗜められた。

口の中のやわらかさとか、熱さとか。
体の外側の皮膚とは、どうしてこんなにちがうんだろう、と思った。

したたる甘い蜜の味を、俺は知ってしまった。

恋人以外しか触れることのない箇所。
そこに今、触れているのだ。
そう思うと、頭の芯が痺れた。



その後も、彼に任せっきりだった。

俺は何にも経験がないから。
何が何だかわからぬままに。

彼が四つん這いになって、俺をいかせてくれた時は、感動した。

でも、素肌を愛撫されるのは、ただくすぐったいだけで。

やっぱり俺は雄なんだ、と思う。
英二を気持ち良くしてあげたい、って思うだけ。



というよりは、見たいのだ。
快感におぼれる、彼の顔を。
もっと、もっと見たい。

苦しそうに眉をひそめて、まぶたをぎゅっと閉じて。

まぶたを開くと、その瞳は黒目がいつもよりも大きく見える。

ぼんやりと、視点を結ばない瞳。

くちびるは快感に充血して、赤い。

そのくちびるに、指をはさむ癖。

ときどき、無意識に、その指を自分で舐めている。

指と指との隙間から漏れ出る吐息は、甘くて熱い…。


3年も思い続けて、彼を思う時、いつも切なかったけれど。
今は、切ないというよりは、いとおしくて。
初めて彼を、かわいいと思っていた。



昨日の情事を思い出す。

「んっ…」
彼は感じて、腰を大きくひねった。

「…いま、どこさわったの…?」
「お臍…舐めたの。」

顔を赤らめて、目を円くしていた。

そんなとこ、なめないでよ、と言われたけれど。

彼の体のどこが感じるのか、この探究心は尽きることがない。


ずっと想い続けた、彼の腿の内側は、滑らかで、熱い。
そこに、何度もキスをした。

その後ろの誘惑に、抗いきれなくて、そっと触れた。

彼は、怯えて、俺の方を見なかった。
怖がって、俺の声が聞こえないふりをした。


俺の、かわいい人。
怖がらないで。
もっと、気持ち良くしてあげたいんだ。

耳元にささやくと、ぎゅっと目を閉じて、うなずいた。

いとおしくて、後ろから抱きすくめた。
大丈夫。
俺にまかせて…。



…といっても。
俺も初めてなんだよな。
大丈夫だろうか。

痛いからもうしない、って泣かれたら、弱ってしまう。
念には念を入れて、もう一度調べておこう。


パソコンを立ち上げて検索をかけた。

ふぅん。
こんな方法があるんだ…。
あっ、これを使えば…。

浪人生にはあるまじき、夜が更けていった…。

BACK | NEXT | LIST