RULES

Happiness is finding someone you like at the front door.


我が家の前に着くと、俺はインターフォンのチャイムを鳴らす。

インターフォン越しに、ただいまと言い、英二は、おかえりと答える。

ドアの鍵が開けられて、後ろ手にドアを閉めると、英二がおかえりのキスをする。


彼が家にいる時は、俺は勝手に鍵を開けて入らない、それが我が家のルールだ。
おかえりのキスが、できなくなってしまうから、というのが、その理由。

これも、二人で暮らし始めた時に、話し合って決めたルールの一つ。

端から見れば、馬鹿馬鹿しいようなものだろうが…。

英二によれば、円満な関係に、おかえりのキスは不可欠だそうだ。
今でもラブラブな、彼の両親にあやかって。



俺は、彼を抱く手に力を込めて、音を立ててくちづけた。

「…英二、いい匂い。」
「お風呂入ったから。」
「…したいな。」
「…酔ってるの?」

「酔ってないよ。あのね…。」
そうして、手塚に聞いた、中等部の頃の話をした。

英二はクスクスと笑い出した。
「おーいし君は、それで、興奮しちゃったってわけ?」

「そう。中等部の頃の英二が、手塚を睨んでるとこを想像して…。」
俺もクスクスと笑った。

「いーよ。お風呂沸いてるから、汗流してきちゃったら。」


英二は手土産のジェラートを受け取ると、ありがと、と言って、俺の頬にキスをくれた。
そして、キッチンへと歩いて行ってしまった。

お愛想で迎えに出て来た同居猫たちが、彼にくっついて帰って行った。



玄関には、俺と、同居猫の一匹だけが残された。

我が家の猫たちの王様は、英二なのだが、この子だけは、俺に特別懐いていた。


俺の足元に纏わり付く猫に話し掛けた。

「ごめんな、今からお前のご主人様を可愛がりたいんだ。だから、また後でな。」


猫は不思議そうな顔をして、しゃがみ込んでいる俺の膝にのって来ようとした。

しかたないから、俺は、猫を抱え上げて、そのままバスルームへと向かった。


早く、英二を膝へ抱え上げて、思い切り愛してやりたい、と思いながら…。



end